「納豆はほぼ毎日食べているし、私は“作れる方”なんじゃないかな」

エクオールについて調べると、こうした疑問が出てきます。大豆食品をよく食べる人なのか、腸内環境が関係するのか、それとも年齢や生活習慣にも違いがあるのか。

たしかに研究では、エクオールを作れる人にいくつかの傾向が報告されています。ただ、普段の食事や生活習慣を並べただけで、「自分は作れる側かどうか」を判断するのは難しいというのが実際のところです。この記事では、公開されている研究や公的資料をもとに、その傾向と、なぜ特徴だけでは判断がつかないのかを見ていきます。

※この記事は公開情報をもとにした解説で、編集者自身の検査結果を紹介するものではありません。

傾向はある。でも、それだけでは決め手になりません

これまでの研究でよく取り上げられているのは、大豆食品を食べる習慣と、腸内細菌叢の構成・多様性の2つです。

研究でみられる傾向わかっていること
大豆食品を食べる習慣エクオール産生との関連が報告されている
腸内細菌叢の構成・多様性エクオール産生状態との関連が報告されている

日本人女性4,412人を対象にした研究では、大豆食品をよく食べる人のほうがエクオール産生者である割合が高くなっていました。とはいえ、大豆をほとんど食べない人の中にも産生者はいますし、反対に大豆を積極的に食べていても作れない人もいます[1]。

これは「その集団ではこういう傾向が見られた」という話であって、一人ひとりに当てはまる診断基準ではありません。自分が実際に作れているかどうかを知りたいなら、特徴を数え上げるより、実際に尿中のエクオールを測定するほうが直接的です。

大豆を食べるだけでエクオールができるわけではありません

エクオールは、大豆そのものにもとから多く含まれている成分ではありません。大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが、腸内細菌によって代謝されることで、はじめて作られる物質です。

食品安全委員会も、大豆イソフラボンが摂取後に腸内細菌などの作用を受けて代謝されることを説明しています[2]。

大豆食品を食べる → ダイゼインが腸に届く → 腸内細菌が代謝する → エクオールができる、という流れです。

ただ、この代謝反応は誰の腸内でも同じように起きるわけではありません。大豆をよく食べている人が、必ずしもエクオールを作れているとは限らない理由は、ここにあります。

大豆食品の摂取習慣とエクオール産生

Japan Nurses’ Health Studyでは、日本人女性4,412人の尿中エクオールとダイゼインを測定し、1,830人(41.5%)がエクオール産生者と判定されました。大豆食品を食べない人と比べて、食べる人のほうが産生者である可能性は高いという結果です[1]。

ただし、これは「大豆を食べ始めれば、作れなかった人も作れるようになる」という話ではありません。ダイゼインを摂ることと、それを実際にエクオールへ変換できることは別の問題で、納豆や豆腐をよく食べているからといって「自分は作れる側」と決めつけることはできないのです。

エクオール産生には腸内細菌も関わっています

大豆食品以上に注目されているのが、腸内細菌です。

2026年に発表された日本人498人を対象とした研究では、4年間にわたって毎年エクオール産生状態を調べています。

  • 4年間ずっと産生していた人:30.9%
  • 年によって産生状態が変わった人:26.1%
  • 4年間ずっと非産生だった人:43.0%

非産生者より産生者のほうが、腸内細菌の多様性が高い傾向も見られました。この研究では、安定して産生していた人とまったく産生していなかった人の間で、ダイゼインの摂取量自体にはそれほど差がなかった一方、腸内細菌叢の構成には違いが見られました[3]。

大豆をどれだけ食べたかだけでは説明がつかず、腸内細菌の状態も関わっていると考えたほうが自然でしょう。ただ、「腸内細菌の多様性を上げればエクオールを作れるようになる」と言い切るのは、まだ早いようです。今のところわかっているのは、両者に関連があるというところまでです。

「産生菌がいる」と「実際に作れる」は別の話です

48〜69歳の日本人閉経後女性58人を調べた研究では、エクオール産生に関係するとされる細菌が56人(97%)から見つかりました。ところが、尿中エクオールから実際に産生者と判定されたのは13人(22%)だけでした[4]。

対象人数の少ない研究なので、22%という数字そのものを一般化することはできませんが、「関連する菌がいる=実際に作れている」とは限らないことは、この結果からもうかがえます。2026年の研究でも、エクオール産生は特定の1種類の菌だけで決まるのではなく、腸内細菌叢全体の構成や多様性が関わっていると報告されています[3]。

食物繊維や「腸活」で作れるようになる?

腸内細菌が絡んでいると聞くと、食物繊維やオリゴ糖を増やせば作れるようになるのでは、と考えるかもしれません。

ただ、ここはまだはっきりしていません。日本人閉経後女性を対象にした試験で、フラクトオリゴ糖を1日5g、2週間摂取しても、エクオール産生能に有意な変化は見られませんでした[5]。

この一つの試験だけで食物繊維が無関係と言い切ることはできませんが、少なくとも「食物繊維を増やせば、作れなかった人も作れるようになる」というほど単純な話ではなさそうです。

年齢や生活習慣との関係は?

年齢、喫煙、運動、睡眠、便通についても研究されていますが、結果は一貫していません。

日本人女性419人を対象にした研究では、喫煙状況や月経・生殖関連の要因と、エクオール排泄との間に明確な関連は見られませんでした[6]。2026年の498人を対象とした研究でも、産生状態が安定していたグループ・変化したグループ・非産生のグループの間で、年齢、性別、BMI、喫煙状況に有意な差はありませんでした[3]。

「年齢が高いから」「運動しているから」「便秘じゃないから」作れる・作れないと判断する根拠は、今のところありません。

日本人の「2人に1人」は本当?

「日本人の約半分がエクオールを作れる」という表現は、よく見かけます。

自宅検査「ソイチェック」を提供するヘルスケアシステムズでは、検査利用者の約44%が産生者だったとしています[7]。前述のJapan Nurses’ Health Studyでは41.5%でした[1]。研究によっては、これより低い割合が出ているものもあります。

調査対象や大豆の摂取状況、採尿条件、判定基準が研究ごとに違うため、数字には幅が出ます[1]。「きっちり2人に1人」というより、「4〜5割程度で、研究によって差がある」くらいに捉えておくのが実態に近いでしょう。

一度「作れない」と出ても、ずっとそのままとは限りません

2026年の研究では、4年間追跡した人のうち26.1%で、年によってエクオール産生状態が変わっていました[3]。閉経後女性を2.5年間追跡した別の研究でも、途中で産生状態が変化した人が確認されています[8]。閉経前女性を対象にした研究でも、測定時期によって産生状態が変わる人が報告されています[9]。

「エクオール体質」という言葉のイメージとは裏腹に、産生状態は測定した時点でのものと考えたほうが、これまでの研究結果には近いようです。

自分がエクオールを作れているか、実際に確かめる方法

特徴だけでは判断がつかないため、実際に確認したい場合は、尿中のエクオールを測定する方法があります。研究でも、尿中エクオール濃度やエクオールとダイゼインの比率をもとに産生者を判定しています[1]。

自宅で採尿し、郵送して調べられる検査もあります。「ソイチェック」は大豆イソフラボンからエクオールが作られているかを尿で調べる検査で、普段あまり大豆食品を食べない人には、採尿前日に納豆1パック、豆腐半丁、豆乳200ml程度を目安に摂るよう案内されます。反対にエクオールを含むサプリメントは結果に影響するため、検査前3日間は控えるよう指定されています[7]。

エクオール検査でわかること、わからないこと

内容
わかること検査条件のもとで、大豆イソフラボンからエクオールが作られ、尿中に排出されているか
わからないこと更年期症状や体調不良の原因、病気の有無、将来の発症リスク、サプリメントの要不要

尿を使うエクオール検査でわかるのは、検査条件のもとで大豆イソフラボンからエクオールが作られ、尿中に排出されているかどうかです[7]。

ヘルスケアシステムズも、郵送検査キットについて、病気の診断や早期発見を目的としたものではないと説明しています[10]。体調の原因を探る検査ではなく、自分のエクオール産生状態を知るための検査、と捉えておくとわかりやすいでしょう。症状について医療的な判断が必要な場合は、医療機関への相談を検討してください。

検査を受けるかどうかは、知りたいことから決めましょう

自分が実際にエクオールを作れているか知りたい、食生活からは判断できないので一度測って確認したい、結果を今後の食生活の参考にしたい——こういう目的であれば、エクオール検査は向いています。

一方、更年期症状の原因や体調不良の原因、病気の有無を知りたいという目的であれば、この検査では答えが出ない可能性が高いでしょう。

「何が測れるか」より先に、自分が何を知りたいのかを整理しておくと、検査選びで迷いにくくなります。エクオールを作れる人には確かにいくつかの傾向がありますが、それを自分に当てはめて終わらせるより、知りたいことがはっきりしてから検査を検討しても、決して遅くはありません。

参考資料・出典

[1]Optimal cut-off value for equol-producing status in women: The Japan Nurses’ Health Study urinary isoflavone concentration survey|PLoS ONE
日本人女性4,412人のエクオール産生者割合、大豆食品摂取との関連、産生者の判定方法を確認。
資料を見る

[2]大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A|食品安全委員会
大豆イソフラボンと腸内細菌による代謝について確認。
資料を見る

[3]Stability of equol production capability is associated with the diversity of the gut microbiota of the host: a prospective cohort study|BMC Microbiology
日本人498人を4年間追跡したエクオール産生状態の変化、腸内細菌叢の構成・多様性との関連を確認。
資料を見る

[4]Inter-relationship between diet, lifestyle habits, gut microflora, and the equol-producer phenotype|Nutrition Journal
日本人閉経後女性58人におけるエクオール産生関連菌と実際の産生状態を確認。
資料を見る

[5]Effects of short-term fructooligosaccharide intake on equol production in Japanese postmenopausal women|Nutrition Journal
フラクトオリゴ糖の短期摂取とエクオール産生能への影響を確認。
資料を見る

[6]Dietary and lifestyle correlates of urinary excretion status of equol in Japanese women|Nutrition and Cancer
日本人女性419人の生活習慣とエクオール排泄との関連を確認。
資料を見る

[7]エクオール検査「ソイチェック」|株式会社ヘルスケアシステムズ
検体、検査方法、採尿前の大豆食品摂取、サプリメントの休止条件、検査利用者の産生者割合を確認。
資料を見る

[8]Equol production changes over time in postmenopausal women|Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology
閉経後女性を追跡したエクオール産生状態の変化を確認。
資料を見る

[9]Equol production changes over time in pre-menopausal women|British Journal of Nutrition
閉経前女性における測定時期による産生状態の変化を確認。
資料を見る

[10]郵送検査キット|株式会社ヘルスケアシステムズ
郵送検査キットが疾病の診断・早期発見を目的としたものではないことを確認。
資料を見る

情報確認日:2026年9月12日。