「エクオールを作れる人には傾向がある。でも、食生活だけでは判断できない」

そうなると次に気になるのは、検査をすれば自分がエクオールを作れるのか、はっきりわかるのかということではないでしょうか。

自宅でできるエクオール検査では、尿中に排泄されたエクオールを測定し、検査時の条件のもとでエクオールが産生されているかを知る手がかりにできます。

ただし、検査結果からわかる範囲は限られています。

生涯変わらない「体質」や腸内環境全体、体調不良の原因、病気の有無まで調べられる検査ではありません。

この記事では、代表的な市販検査「ソイチェック」の公式情報と、エクオール産生について調べた研究をもとに、検査でわかることと、結果だけではわからないことを分けて整理します。

※この記事は公開情報をもとにした解説です。編集者自身の受検体験ではありません。

エクオール検査は、尿中のエクオールを調べる検査

まず確認しておきたいのが、エクオール検査で実際に何を測っているのかです。

代表的な市販検査「ソイチェック」は尿を使う検査で、大豆イソフラボンからエクオールが作られているかを調べるものとして案内されています。食事から摂った大豆イソフラボンの一種・ダイゼインが腸内細菌によって代謝されてエクオールとなり、その後尿中へ排泄されることを利用しています[1]。

つまり、直接調べているのは「体質」という抽象的なものではなく、尿中にどの程度エクオールが含まれているかです。

ここを押さえておくと、結果の意味も理解しやすくなります。

検査でわかるのは「その条件下でエクオールが産生されているか」

ソイチェックの結果では、尿中エクオール濃度をもとに、エクオールが「作れている」「作れていない」と判定します。

メーカー資料では、尿中エクオール濃度が**1.0μM以上の場合を「作れている」**とする区分になっています。また、測定値は5段階のLevelで示され、「Level 4以上」を「理想」として案内しています[2]。

結果票には、エクオール産生の割合と判定が同社のデータ(1,849名)および独自基準に基づくものであり、今後の研究によって修正される可能性があることも記載されています[2]。

ここで注意したいのは、1.0μMやLevel 4が、病気の有無を判断する医学的な正常値という意味ではないことです。

あくまで、ソイチェックという検査サービスが結果を伝えるために設けている判定・評価区分として見る必要があります。

そのため、

Level 4だから健康
Level 2だから健康ではない

という読み方はできません。

市販検査と研究では「作れる人」の決め方が同じとは限らない

エクオールについて調べると、「日本人の○%がエクオールを作れる」といった数字を目にすることがあります。

ただ、この数字を見るときは、何を基準に「作れる人」としたのかを確認する必要があります。

2018年に報告されたJapan Nurses’ Health Studyの尿中イソフラボン濃度調査では、33〜86歳の女性4,412人の早朝尿が解析されています。この調査では、事前に大豆食品を摂取させる「ソイチャレンジ」は行わず、日常生活下で採取した尿について、エクオール濃度だけではなく、エクオールとダイゼインの比率を使用しています。

この研究では、

log10(尿中エクオール/尿中ダイゼイン)≧−1.42

をエクオール産生者のカットオフとして提案し、この基準では41.5%が産生者と判定されました[3]。

2024年に報告された、22〜88歳の日本人男女466人の健診受診者を対象とする横断研究でも同じ基準が用いられ、42%が産生者と分類されています[4]。なお、この研究では大豆食品の摂取状況や直前の食事内容に関する情報は取得されていませんでした。

一方、ソイチェックでは尿中エクオール濃度1.0μM以上を「作れている」とする区分になっています。

市販検査と研究論文では、対象者も測定条件も「産生者」の定義も同じとは限りません。

そのため、「この研究では41.5%」「この検査では○%」という数字だけを並べて、同じ条件の結果として比較するのは避けたほうがよいでしょう。

検査前の食事によっても条件が変わる

ソイチェックでは、検査前の過ごし方にも条件があります。

公式案内では、検査前3日間はエクオールサプリメントを摂取しないこと、そして採尿前日は大豆食品を積極的に摂ることが案内されています。

大豆食品の目安として、納豆1パック、豆腐半丁、豆乳200ccなどが示されています[5]。

エクオールは大豆イソフラボンに含まれるダイゼインから産生されるため、こうした採尿前の条件も結果の解釈に関わります。

公式サイトでも、普段大豆をあまり食べない人は事前に摂取することで、大豆イソフラボンからどの程度エクオールが作られているか調べられると説明されています[1]。

逆にいえば、検査結果は食事などの条件と切り離して考えることはできません。

一度の尿検査結果をそのまま、

「生まれつき決まっていて、一生変わらないエクオール体質」

と表現するのは単純化しすぎです。

一度の結果が一生続くとは限らない

エクオール産生については、繰り返し測定した研究もあります。

閉経前女性79人を対象としたランダム化クロスオーバー介入研究では、高大豆食と低大豆食をそれぞれ6か月間摂取し、その間に1か月のウォッシュアウト期間を設け、各食事期間中に3回ずつ夜間尿が測定されました[6]。

この研究では、エクオール/ダイゼイン比が0.018以上、かつ尿中ダイゼインが2 nmol/mg creatinine以上という基準で産生者を判定しており、ソイチェックの判定基準とは異なります。

そのうえで、一部の参加者では測定時期によってエクオール産生者・非産生者の分類が変化しました。同研究では、各試験期間内で6〜11%、食事期間をまたいだ比較では16%の参加者で分類の変化が確認されています[6]。

ただし、この結果から「誰でも頻繁に産生状態が変わる」と考えるのも適切ではありません。

対象者や食事条件、産生者の判定方法が決められた一つの介入研究です。

ここから言えるのは、エクオール産生状態を完全に固定された性質として扱うには注意が必要というところまでです。

エクオール検査で「わかること」と「わからないこと」

整理すると、検査から得られる情報と、そこからは判断できないことには違いがあります。

内容
わかること検査条件のもとで尿中にどの程度エクオールが排泄されているか。市販検査では、その測定値をもとに設定された判定・Levelを確認できる
わからないこと生涯変わらない体質、エクオール産生菌の種類や数、腸内環境全体の状態、更年期障害などの病気、現在の症状の原因、将来の病気、エクオールサプリが必要かどうか

特に混同しやすいのが、尿中エクオール検査と腸内フローラ検査です。

尿中にエクオールが排泄されているかを調べる検査から、どの種類のエクオール産生菌がいるのか、その菌が何個いるのか、腸内細菌全体がどのような状態なのかまで知ることはできません。

知りたい対象が違えば、必要な検査も変わります。

【内部リンク候補:エクオール検査と腸内フローラ検査、何が違う?】

「作れない」という結果は、健康状態の判定ではありません

もし検査結果が「作れていない」だったとしても、それだけで、

「健康状態が悪い」
「大豆食品を食べても意味がない」
「更年期症状の原因はエクオール」
「エクオールサプリを飲む必要がある」

と判断することはできません。

ヘルスケアシステムズのソイチェック結果票には、本検査は病気の診断ではなく、気になることがある場合は医師に相談するように明記されています[7]。

そのため、エクオール検査の値だけから、更年期障害、骨粗しょう症、関節症状、肌の不調などを診断したり、将来の病気を予測したりすることはできません。

体調について困っていることがあり、原因や治療について知りたい場合は、エクオール検査とは別に医療機関へ相談する必要があります。

エクオールサプリが必要かどうかも、検査だけでは決められない

エクオールを「作れていない」という結果を見ると、「ではサプリメントで補ったほうがいいのでは」と考えるかもしれません。

ただし、検査結果はサプリメントを使用する必要性を判定するものではありません

検査で確認しているのは尿中のエクオールであり、個人の症状、病歴、食生活、服用中の薬などを総合してサプリメントの必要性を判断しているわけではないからです。

「作れていない」という結果と「サプリが必要」という判断は、いったん分けて考えたほうがよいでしょう。

検査を受ける前に確認しておきたいこと

エクオール検査は、「自分が現在の条件でエクオールを産生しているか知りたい」という目的には使いやすい検査です。

一方、申し込む前には次の点を確認しておくと、結果を必要以上に大きく受け取らずに済みます。

  • 何を知りたいのか
    エクオール産生状態なのか、腸内細菌なのか、体調の原因なのかを分けて考える。
  • 採尿前の条件を守れるか
    ソイチェックでは検査前3日間のエクオールサプリ中止と、採尿前日の大豆食品摂取が案内されています[5]。
  • 判定基準が何を意味しているか
    Levelや「理想」はメーカーが設定した結果表示であり、病気を判断する医学的正常値ではありません[2]。
  • 検査データの扱い
    ヘルスケアシステムズは、検査結果の提供に加え、サービス改善、商品開発やマーケティング、研究などを個人情報の利用目的として公開しています。また、保有個人データについて利用停止や消去などを請求できる旨も明記しています。申込前に最新の個人情報保護方針を確認しておくとよいでしょう[8]。

「検査をしたら全部わかる」と考えるより、何を確認するための検査なのかを理解したうえで利用するほうが、結果を使いやすくなります。

エクオール検査は、結果から言える範囲を知って使う

エクオール検査では、尿中に排泄されたエクオールを測定し、検査時の条件のもとでエクオールが産生されているかを知る手がかりにできます。

一方で、その結果だけから、

一生変わらない体質
腸内細菌の種類や数
腸内環境全体
病気や不調の原因
将来の健康状態
サプリメントの必要性

まで判断することはできません。

また、市販検査と学術研究では「エクオール産生者」の判定方法が同じとは限りません。検査結果や「日本人の○%が産生者」という数字を見るときも、どの方法で調べた数字なのかを確認することが大切です。

エクオール検査には、自分の産生状態を知るために役立つ部分があります。

ただ、「作れる・作れない」という結果を必要以上に広げず、その検査で実際に測っているものと、結果から言える範囲を知ったうえで使うことが大切です。